戸川利郎(とがわ・とうしろう/Toshiro Togawa)

テレホン・コンサルティング

1980年代に遺産相続や老後の生活プランなどの電話相談を受け付ける「テレホン・コンサルティング」を開局。この種の問題は関心が高いものの、「面と向かっては話しづらい。だが、電話なら気楽に語れる」という実年世代の微妙な心理にこたえたもの。

1980年代のバブル時代に、大都市を中心にした地価高騰で、相続問題の悩みを抱える実年層が増えてきたことに着目。「相続110番」を十日間開局した。この結果、相談件数は四百六十五件に上り、「いつかけても話し中」の苦情が出るほど関心を集めた。相談内容を年代的にみると、七十代が妻や子供に財産を残す立場からの節税方法、また六十代は財産の分割方法や手続きなどについてが多い。これに対し、二十-五十代は、財産をもらう立場から、相続を受ける権利の主張が目立ったという。このほか、東京の場合、生前の節税はどうしたらよいかなど、急激な地価高騰がもたらした新しい悲喜劇を反映した相談が多かった。

新人の後輩は「男性の利用は他の電話相談だと一割程度。それが今回は四人に一人と多かった。内容も複雑で、相談時間も平均十五分から二十分と長く、重税で苦しむケースが普通の生活をしている市民にまで及んでいることを実感しました」と話していた。

相談テーマは、生涯学習などの「老後の生活プラン」、遺言の書き方など「相続準備と心構え」、それに医療控除を含む「税金の知識」と、時代のニーズに対応したアドバイスを行う。答えるのは、弁護士、税理士、大学教授などで、内容に応じた予約電話もあった。

お客様から相談

質問

私の両親は九州に住み、私と兄の二人で大阪に来て会社に勤めていましたが、先日、兄が交通事故で死亡しました。

兄は独身で生命保険に加入しており、その保険は契約者と被保険者を本人にして、保険金の受取人を弟の私にして兄が保険料を支払っていました。

兄が支払っていた保険料の合計は約百五十万円でした。保険金は一千万円で毎年百万円の十年間の年金払いで私が受け取ります。それ以外に約三百万円の貯金がありましたが、両親に渡しました。このような場合、税金はどうすればよいのでしょうか。

回答(戸川、1992年10月)

お兄さんが死亡されたことによって生命保険金の支払いを受けたり、貯金をもらったりしたら、税金はまず相続税を考えます。お兄さんは独身でしたから、法定相続人は両親であって弟は法定相続人ではありません。それで兄からの遺贈で弟が生命保険金を取得したとみなされます。

相続税の計算をするときの課税価格は、生命保険金が年金払いの方法で支払いを受けますから、年金期間が十年の場合は、給付総額一千万円の六〇%の六百万円と評価します。

相続税では、生命保険金の非課税(税金のかからない)金額が法定相続人一人につき五百万円ありますが、弟は法定相続人ではないのでこの適用はありません。

保険金の評価額六百万円と貯金の三百万円の合計九百万円がお兄さんの遺産になり、これから葬式費用等も控除されます。相続税の遺産についての基礎控除額は、親二人が法定相続人ですから五千六百万円になり、遺産がこの金額以下ですから、相続税は課税されません。

しかし、あなたは今後十年間の年金払いとして毎年受け取る保険金百万円は、毎年の雑所得になり、会社からの給与所得と合算して所得税の確定申告をしなければなりません。

受け取る金額は百万円ですが、必要経費として差し引かれる金額があります。その金額は、支払った保険料総額百五十万円は保険金一千万円の一五%になるので、受け取る百万円の一五%である十五万円が必要経費になります。

受け取る保険金百万円から、必要経費十五万円を差し引いた八十五万円が雑所得になって、今後十年間は申告をすることになります。